【開催報告】「VISAが取れない」から文科省の検討へ ── 高専OBOGが起こした2年半の"市井のロビイング"、その全貌
西山茂丸氏・高嶋孝明氏が明かす、一人の卒業生の声が"社会のうねり"になるまでの軌跡
株式会社Shireru(神奈川県横浜市、代表:山田みかん)は、2026年6月15日(月)、オンラインウェビナー「高専卒業に学位授与、文科省検討へ~『VISAがとれない…』高専卒の訴えを"社会のうねり"へ!文科省を動かした活動に迫る~」を開催しました。
2026年6月7日、読売新聞が「高専卒業生に文科省が学位授与検討へ」と報じたことで大きな注目を集めたこの問題。その裏には、約2年半にわたって地道に声を上げ続けてきたヒューマンネットワーク高専のOBOGたちの存在があります。本ウェビナーでは、実際に活動を率いてきた同会の西山茂丸氏・高嶋孝明氏をゲストに迎え、モデレーターの山田とともに、一人の卒業生の困りごとがどのようにして国を動かす力へと変わっていったのか、その軌跡を振り返りました。

きっかけは海外で暮らす一人の卒業生の「学位記がない」という声
活動の出発点は、家庭の事情で海外生活を送る高専OGが直面した、ある困りごとでした。
現地の役所で「Degree(学位)があるか」を尋ねられた際、自分は学位を持っていると思い込んでいたものの、帰宅して確認すると「学位記」がない。そこで初めて「高専卒業時に授与されるのは「準学士」という"称号"であり、学位ではない」と気づいたといいます。
学歴を誤って証明してしまうリスクすら抱えるこの問題を、OG本人が高専卒業生が集まる会合で発表し、山田が記事化したことが活動の第一歩となりました。
ここから西山氏と高嶋氏らが参加するチャットグループが発足。「準学士を称号ではなく学位にしてはどうか」と発信していく日々がスタートしました。
事例を集める:N=1探しから始まった調査
この高専OGと同じように、準学士が称号であることに悩んだことのある人はいるのだろうかー
外資企業での勤務経験のある西山氏も、人事担当者から学位の有無を厳しく問われた経験がありました。ただし、OGと西山氏の事例だけでは「個人のケース」とみなされ、問題として波及しないことが考えられます。そこで、同様に悩まれる方をリサーチし、インタビューする活動を始めました。
すると、北九州高専に、3年次で留学しようとしたところ「高校卒業証明書」も「学位取得」もできず、留学要件を満たせないという壁にぶつかった経験のある男性がいることが分かりました。
(参考:https://shireru.jp/blog/kosen_study-abroad/)
さらに、米国企業からヘッドハンティングされ活躍していた奈良高専OBは、永住権取得のために大学院への進学を目指す中で、高専での履修歴に学位との互換性がないことを理由に認定されず、苦労していたことも判明しました。
(参考:https://shireru.jp/blog/kosen_usa/)
奈良高専OBに声をかけたのは西山氏自身でした。
西山氏は「あなたのような苦しみを後輩たちにさせたくない」と奈良高専OBに声をかけ、取材への協力を依頼したと語ります。この具体的な事例は記事として大きな反響を呼び、その後の活動の重要な軸になりました。

個別の具体事例だけでは全体像が見えないと、ヒューマンネットワーク高専の会員を対象にアンケートも実施。約55名から回答が集まり、そのうち約20名が学位に関する困りごとを経験していたという結果になりました。
さらに、卒業時にもらう「準学士」が称号であることを知らなかった人も回答者の半数に当たる25名いることが分かりました。調査を進めると一部の高専では公式HPなどで「本科を卒業すると学位が取得できる」と掲載している学校もあり、教育現場での情報伝達の不十分さが浮き彫りになりました。
同時期に私立高専協会が学位授与を求める声明を出し、こちらも記事にすることで、問題に関連する動きをつぶさに取り上げました。
根拠をまとめる:レポート化と学会発表
集まった事例とデータを基に、きっかけとなる発表をした高専OGと高嶋氏が中心となって全体像を一つのレポートへと整理していきました。
当初は学術論文として発表する案もありましたが、査読や発行までの時間がかかり、学会関係者という限られた読者にしか届かない懸念があったため、OGがドメインを取得し、ウェブサイト上でレポートを公開する形を選択。大きく8要素で構成されたこのレポートは、海外(イギリスなど)における技術者教育の学位制度との比較も含み、海外KOSENでは学位が取得できるなどの現状を改めて整理しました。
このレポートは、断片的だった情報を一つの文書に集約したことで、国会議員などへ説明資料として手渡せたなど、関係者への情報共有を格段にスムーズにしました。
その後、高嶋氏が高専学会の年次大会で発表を行い、学会誌にも掲載。著作権上の許諾を得たうえでオンライン上にも公開し、検索やAIの回答にも情報源として引用されるようになっていったといいます。
メディアを動かす:日経ビジネスの記事が転載、バズへ
転機となったのは、日経ビジネスの記者からの取材依頼でした。
記者個人のプライベートな事情から高専について検索していたところ、過去に公開した奈良高専OBの記事に偶然出会い、学位問題を知ったことが連絡のきっかけだったといいます。
2026年3月に「今こそ高専」という特集記事が掲載され、その後4月に日経電子版へ転載されると、SNSのトレンドに上がるほどの反響を呼びました。
この機を捉えて高嶋氏のインタビューを軸に留学生が学位を取得できない問題についても追加の記事を展開。
同じタイミングで委員会質問なども行われ、様々な場所で高専の学位問題について話題にのぼるようになった結果、文部科学省による学位授与の検討という一つのマイルストーンに到達しました。

これからの高専への想い
西山氏は、各高専に分散する似た授業や知見をコンテンツとして共有し合い、寮を活用しながら学生が複数の高専を行き来して学べるような、自由度の高い高専の姿を将来像として語りました。
一方、高嶋氏は、"少数派"だからこそできる自由な挑戦を高専が体現していくことへの期待を述べました。タイへの高専教員派遣に携わった経験から、外の視点を取り入れることで国内の変革を促す重要性も強調しています。
モデレーターを務めた山田は、「高専に関わりのなかった自分が活動に加わったのは、出会う高専OBOGの皆さんが本当に素敵な方ばかりだったから」と振り返り、今後もこうした卒業生の挑戦を後押ししていきたいと締めくくりました。
開催日時:2026年6月15日(月)20:00~20:50(JST)
開催形式:オンライン(Zoom)
主催:株式会社Shireru
登壇者:西山茂丸氏(ヒューマンネットワーク高専)、高嶋孝明氏(ヒューマンネットワーク高専)
モデレーター:山田みかん(株式会社Shireru 代表)
会社名:株式会社Shireru
所在地:神奈川県横浜市西区浅間町1丁目4番3号ウィザードビル402
代表:山田みかん
設立:2023年8月
URL:https://shireru.jp/
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株式会社Shireru(神奈川県横浜市、代表:山田みかん)は、2026年6月15日(月)、オンラインウェビナー「高専卒業に学位授与、文科省検討へ~『VISAがとれない…』高専卒の訴えを"社会のうねり"へ!文科省を動かした活動に迫る~」を開催しました。
2026年6月7日、読売新聞が「高専卒業生に文科省が学位授与検討へ」と報じたことで大きな注目を集めたこの問題。その裏には、約2年半にわたって地道に声を上げ続けてきたヒューマンネットワーク高専のOBOGたちの存在があります。本ウェビナーでは、実際に活動を率いてきた同会の西山茂丸氏・高嶋孝明氏をゲストに迎え、モデレーターの山田とともに、一人の卒業生の困りごとがどのようにして国を動かす力へと変わっていったのか、その軌跡を振り返りました。

きっかけは海外で暮らす一人の卒業生の「学位記がない」という声
活動の出発点は、家庭の事情で海外生活を送る高専OGが直面した、ある困りごとでした。
現地の役所で「Degree(学位)があるか」を尋ねられた際、自分は学位を持っていると思い込んでいたものの、帰宅して確認すると「学位記」がない。そこで初めて「高専卒業時に授与されるのは「準学士」という"称号"であり、学位ではない」と気づいたといいます。
学歴を誤って証明してしまうリスクすら抱えるこの問題を、OG本人が高専卒業生が集まる会合で発表し、山田が記事化したことが活動の第一歩となりました。
ここから西山氏と高嶋氏らが参加するチャットグループが発足。「準学士を称号ではなく学位にしてはどうか」と発信していく日々がスタートしました。
事例を集める:N=1探しから始まった調査
この高専OGと同じように、準学士が称号であることに悩んだことのある人はいるのだろうかー
外資企業での勤務経験のある西山氏も、人事担当者から学位の有無を厳しく問われた経験がありました。ただし、OGと西山氏の事例だけでは「個人のケース」とみなされ、問題として波及しないことが考えられます。そこで、同様に悩まれる方をリサーチし、インタビューする活動を始めました。
すると、北九州高専に、3年次で留学しようとしたところ「高校卒業証明書」も「学位取得」もできず、留学要件を満たせないという壁にぶつかった経験のある男性がいることが分かりました。
(参考:https://shireru.jp/blog/kosen_study-abroad/)
さらに、米国企業からヘッドハンティングされ活躍していた奈良高専OBは、永住権取得のために大学院への進学を目指す中で、高専での履修歴に学位との互換性がないことを理由に認定されず、苦労していたことも判明しました。
(参考:https://shireru.jp/blog/kosen_usa/)
奈良高専OBに声をかけたのは西山氏自身でした。
西山氏は「あなたのような苦しみを後輩たちにさせたくない」と奈良高専OBに声をかけ、取材への協力を依頼したと語ります。この具体的な事例は記事として大きな反響を呼び、その後の活動の重要な軸になりました。

個別の具体事例だけでは全体像が見えないと、ヒューマンネットワーク高専の会員を対象にアンケートも実施。約55名から回答が集まり、そのうち約20名が学位に関する困りごとを経験していたという結果になりました。
さらに、卒業時にもらう「準学士」が称号であることを知らなかった人も回答者の半数に当たる25名いることが分かりました。調査を進めると一部の高専では公式HPなどで「本科を卒業すると学位が取得できる」と掲載している学校もあり、教育現場での情報伝達の不十分さが浮き彫りになりました。
同時期に私立高専協会が学位授与を求める声明を出し、こちらも記事にすることで、問題に関連する動きをつぶさに取り上げました。
根拠をまとめる:レポート化と学会発表
集まった事例とデータを基に、きっかけとなる発表をした高専OGと高嶋氏が中心となって全体像を一つのレポートへと整理していきました。
当初は学術論文として発表する案もありましたが、査読や発行までの時間がかかり、学会関係者という限られた読者にしか届かない懸念があったため、OGがドメインを取得し、ウェブサイト上でレポートを公開する形を選択。大きく8要素で構成されたこのレポートは、海外(イギリスなど)における技術者教育の学位制度との比較も含み、海外KOSENでは学位が取得できるなどの現状を改めて整理しました。
このレポートは、断片的だった情報を一つの文書に集約したことで、国会議員などへ説明資料として手渡せたなど、関係者への情報共有を格段にスムーズにしました。
その後、高嶋氏が高専学会の年次大会で発表を行い、学会誌にも掲載。著作権上の許諾を得たうえでオンライン上にも公開し、検索やAIの回答にも情報源として引用されるようになっていったといいます。
メディアを動かす:日経ビジネスの記事が転載、バズへ
転機となったのは、日経ビジネスの記者からの取材依頼でした。
記者個人のプライベートな事情から高専について検索していたところ、過去に公開した奈良高専OBの記事に偶然出会い、学位問題を知ったことが連絡のきっかけだったといいます。
2026年3月に「今こそ高専」という特集記事が掲載され、その後4月に日経電子版へ転載されると、SNSのトレンドに上がるほどの反響を呼びました。
この機を捉えて高嶋氏のインタビューを軸に留学生が学位を取得できない問題についても追加の記事を展開。
同じタイミングで委員会質問なども行われ、様々な場所で高専の学位問題について話題にのぼるようになった結果、文部科学省による学位授与の検討という一つのマイルストーンに到達しました。

これからの高専への想い
西山氏は、各高専に分散する似た授業や知見をコンテンツとして共有し合い、寮を活用しながら学生が複数の高専を行き来して学べるような、自由度の高い高専の姿を将来像として語りました。
一方、高嶋氏は、"少数派"だからこそできる自由な挑戦を高専が体現していくことへの期待を述べました。タイへの高専教員派遣に携わった経験から、外の視点を取り入れることで国内の変革を促す重要性も強調しています。
モデレーターを務めた山田は、「高専に関わりのなかった自分が活動に加わったのは、出会う高専OBOGの皆さんが本当に素敵な方ばかりだったから」と振り返り、今後もこうした卒業生の挑戦を後押ししていきたいと締めくくりました。
イベント概要
タイトル:高専卒業に学位授与、文科省検討へ~「VISAがとれない…」高専卒の訴えを"社会のうねり"へ!文科省を動かした活動に迫る~開催日時:2026年6月15日(月)20:00~20:50(JST)
開催形式:オンライン(Zoom)
主催:株式会社Shireru
登壇者:西山茂丸氏(ヒューマンネットワーク高専)、高嶋孝明氏(ヒューマンネットワーク高専)
モデレーター:山田みかん(株式会社Shireru 代表)
株式会社Shireruについて
株式会社Shireruは、自治体・行政機関の政策PR支援を中心に、ベンチャーや地方中小企業の広報支援や世論喚起型のロビイング(パブリック・アフェアーズ)支援を行う企業です。プレスリリース作成支援やメディアリレーション、広報人材育成など、「知られる」仕組みづくりを通じて、行政と市民・社会をつなぐ情報発信を支援しています。会社名:株式会社Shireru
所在地:神奈川県横浜市西区浅間町1丁目4番3号ウィザードビル402
代表:山田みかん
設立:2023年8月
URL:https://shireru.jp/
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