輪島キリモト 「情動 - JYODO」 / ギャラリー月極

輪島の地で二百年以上、木の仕事に携わってきた桐本家は、江戸時代後期から大正にかけては屋号を「久之氶」とし、輪島漆器の製造販売を営んでいました。昭和の初めに屋号を「桐本木工所」とし、木を刳ることを得意とする下請の朴木地屋に転業。平成に入り、屋号を「輪島キリモト」とし、木地屋として造形を生み出す力を活かしながら塗り仕上げまで手がけるようになり、技法や工程の革新にも挑戦しています。漆の歴史を辿ると、九千年前の縄文時代に木の樹液である接着剤として用いられたことがはじまりだと言われています。後に塗料として用いられるようになり、木のみならず布、紙、土など、多くの素材に塗られ、水や油や虫から素材を守る存在となりました。近代になり、化石燃料から生まれる様々な速乾塗料が登場しはじめてから、漆は高級な塗料としての位置づけが強くなり、精神面のみならず機能面までもが見えにくくなっていきました。現在、多くの日本の伝統工芸同様、輪島の漆業界も深刻な後継者問題を抱えています。品物を作る人だけでなく、道具を作る人、素材を育む人が減少を続けており、現存している人たちで、時代を読みながら新たな循環の仕組みを作り出す必要があります。輪島キリモト八代目である桐本滉平は、自然素材の魅力と人間の創造力の融合には無限の可能性が秘められていると信じ、人と自然の心地よい循環を追求することで、先人たちから受け継いだ文化を未来につないでいきたいと考えます。本展覧会タイトルの「情動-JYODO-」は、伝統の素晴らしさを大切にしながら、情緒が動く瞬間を生み出していきたいという意味が込められています。今回の展覧会では、視覚、嗅覚、触覚、味覚、聴覚を切り口にお酒の席が賑やかになるような品物が、輪島の木地師、塗師、蒔絵師たちとともに準備されています。日本ではなかなか商品化されない、春画をモチーフとした酒器も見所の一つです。